めんどくさがり系女子の恋愛事情
桃はなんて答えるんだろう…?
少しの沈黙のあと、桃は口を開いた。
目には涙を浮かべながら。
「…私だって好きだよ!!
でも…だから無理なの。
この気持ちを知ってしまったら、
友達には戻れない…!」
それ以降の会話は耳に入ってこなかった。
信じられない事実を突きつけられて、何も考えられなかった。
高野くんは桃が好き。
桃は高野くんが好き。
…なんだ、それって
両想いじゃん。
恋愛経験の少ない私にでもわかる。
桃が何を躊躇ってるのか知らないけど、好きなら素直に好きって言っていいんじゃないの。
…まさか私に遠慮してる?
私が高野くんのこと好きって言ったの気にしてる?
友達でもないのに、申し訳ないって思ってる?
なんだろう…考えれば考えるほど、心が凍っていく。
今の私は二人の邪魔しかしてない。
二人を不幸にしてるのは私だ。
何を思ったのか、私の手はドアを開け、足は二人に向かっていた。
ガラッ
桃と高野くんが同時に振り返り、目を見開く。
「っ…夏美…。」
「どうしてここに…。」
ごめんね、話の邪魔して。
ううん、それどころか二人の幸せの邪魔もして。
心の中では謝罪していたが、私は無表情だったのかもしれない。
二人の顔は強張っていた。
「どうしてって…鞄取りに来ただけ。
そこにあるの見えない?」
自分でも驚くほどの低い声。
久しぶりに向き合った桃に名前を呼ばれたことに気づかないほど、私には余裕がなかったのかもしれない。
「…どこまで話聞いてたの。」
恐る恐る聞いてくる桃。
そんなに聞かれたくないならこんなところで話さなきゃいいのに。
「別に。聞いてないけどなんで?
聞かれたくない話でもしてたわけ?」
「そういうことじゃないけど…。」
歯切れの悪い桃にイライラしてきた。
自分の席に行き、鞄を手に取る。
そこで思い出したかのように言った。
「あーまぁ、二人が好き好き言い合ってるのは聞こえたかな。
そういうの他所でやってくれない?」
「「っ…。」」
息をのむ桃と高野くん。
その様子から、さっき聞いたのは嘘ではないんだなって確信してしまった。
…一瞬でも、嘘であることを願った自分は愚かだ。