理系教師のオトし方
誰もいない教室は、薄暗くて蒸し暑かった。

先生は、ブラインドを上げて、窓を開ける。


眩しくて、私は片目を瞑った。


「とりあえず、その席座って。」


先生は、一番前、左から二列目の席を指差した。


私は無言でカバンを置き、イスを引く。


「じゃあ始めるぞ。教科書32ページ開いて。」


「えっ!先生!補習って、ほんとに私一人だけ?!」


先生は、きょとんと私を見てる。


「そうだが。」


何がおかしい?と言わんばかりの表情。


10日間、ずっと夏川先生と二人きりで授業なんて…!




「…秋野。」



すると、先生が急に真剣な目で私の顔をのぞきこんできた。


ゆっくり、教壇から降りて近づいてくる。



…何…この展開。



先生の顔がいつもと違う。オトコの顔になってる。



先生の視線に、体が固まって動けない。



座ってる私の顔に、ゆっくり手を伸ばしてくる。



あれ、先生、今日メガネしてない。


切れ長だけど、目、二重なんだ。



ドキドキしながら、近づいてくる顔をまじまじ見て、こんなことを考えていた。
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