し・か・え・し


「け・・・」
啓次郎と名前をつけた呼ぼうとした
瞬間。


「もー!!!加藤くん!
待ってよぉ」


後を追ってきたのは
小柄な可愛らしい女の人だった。


「もー!トロトロすんなよ」


その時女の人は玄関を出て
ほんの5段くらいの階段から落ちそうになった。


すぐにキャッチしたのは啓次郎。


「あぶねーな!」


「あ・・・ありがと」


「怪我してないか?」


心配そうに顔を除き込んだ。


二人のいい感じの雰囲気に
あたしは『もう終わった』と実感した。


啓次郎が抱きしめる相手はあたしじゃない
その目の前の子。


もう会いに行くつもりはない
それはもう新しい恋を見つけたから。


後から出てきた従業員らが
二人の光景を見て
「おいおい!他所でやれよな」
「まだ抱き合うのは明るいんじゃないか?」
「仲がいいのはわかるけどなぁ~
会社の前はまずいぞ!」
なんて笑っている。


あたしは向きを変えて
家へと帰った。


「桃華」
桃華にしか泣きついて話すことはできない。


「何かあった?」


「啓次郎と会っちゃった」


「わっ!会ったの?
良かったじゃん!
感動の再会だった?」


あたしが泣きながら
電話をしたものだから
嬉しくて嬉しくて
感動の涙だと思ったらしい。



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