し・か・え・し


丁寧にお礼を言えと言うことなのね
そう思ったあたしは
「どうもありがとうございました」
深々と頭を下げた。


すると神野くんは
「ふざけてんのか!」
突然キレ口調であたしに言った。


「え・・・
丁寧に謝って怒られる意味わからないんだけど
超気分悪い 外の空気吸ってくる」


あたしも半キレ状態に陥り
それを落ち着かせるために外へ行った。


あたし
神野くんのことどうして好きだったんだろう
すっかり夜が更けた空を見ながら考えた。


そう・・・神野くんは顔も良かったし
みんなに人気があった
近づきにくい存在でもあったけど
何も取り柄のないあたしにでも
他の人と同じように接してくれた。


あたしが風邪で2日休んだ時
隣の席だった神野くんは
ノートを取ってくれていた。


そんな優しさをあたしは
勘違いしてたのかもしれない。


バカだったな・・・あたし。


「おい!もしかして怒った?」


座り込んでたあたしの目の前に
神野くんが立っていた。


「あ・・・」


「なかなか入ってこねーし」


「別に怒ってないし」


「申し訳ない」


へっ?
今度は神野くんがあたしに謝った。


【どうもありがとうございました】
その言い方が別れた彼女の
最後の言葉だったそうで
言い方がすごく似てて被ってしまったって。


彼女は他の男の人を好きになって
神野くんに今まで
【どうもありがとうございました】
と 意味ありげに意地悪げに
言ったそうだ。





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