わたしはみんなに殺された2〜贖罪の時〜
「〜〜〜〜〜っっっ!!!」
気持ちの悪い視線を振り切るように、バッと踵を返す。
それが本当に〈あの子〉なのか、なんで頭を叩きつけているのか、なにがしたいのか、そんなこと、どうだっていい。
今はとにかく、逃げなくちゃ…!!
一気に膨れ上がった危機感が、私の足を無我夢中で動かす。
これが火事場の馬鹿力ってやつなのかな。
いつもより早く走れている気がするのと、全力疾走しながらでも後ろの音を気にする耳が、やけに頼もしかった。
扉が開く音はしない。叩く音も止んだ。
もちろん、ペタペタなんていう足音も、一度だけ聞いた〈あの子〉の幼い声も、聞こえてこない。
追いかけては、来ていない?
そう思いはしても立ち止まることはできなくて、美術室から遠い方の階段まで全力で走りきり、飛ぶようにそこを駆け下りる。
…今の行動、まるで私を怖がらせて遊んでいるみたいだった。
思い出すだけで気持ちが悪い。
これじゃあまるで、子供、みたいだ。
人に悪戯をして、にんまり笑う子供……。
〈あの子〉は私が想像しているよりもずっと、人間に近いものなのかもしれない。
そう考えてまた、身体がぶるりと震える。
その震えを誤魔化すように、私は足を必死で前に動かした。