わたしはみんなに殺された2〜贖罪の時〜
一瞬にして、身体が固まる。
その小さな人影は、ニタリと笑みを浮かべたまま、階段を登りきったすぐの場所に立ちどまった。
気味の悪い笑み。
ポタポタとこぼれ落ちる赤い液体。
その幼い容姿を見間違えるはずもない。
……間違い無く、〈あの子〉だ。
このまま進む?それとも降りる?どうせなら屋上にでも上がってみようか?
そんな声が聞こえてきそうなくらい、〈あの子〉はキョロキョロと教室側の廊下と私のいる階段、それから横にある屋上への階段を見比べる。
…そんな行動したって、どうせ見えないくせに!
一歩も動けなくなった私は、心の中で悪態を吐く。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
こんな状況、一体どうしろっていうの?
もちろんこのまま上るわけにはいかない。
けど、遠ざかるにしたって、ここは階段だ。
平面ならまだしも、階段を音を立てずに降り切れる自信などない。
いやまずその前に、問題点はそれがほんの数段先にいるってことだ。
至近距離すぎる。
こんな近くで気付かれたら逃げ切れるわけがないし、近すぎてほんの少しでも音を立てたら間違いなく気付かれる!
〈あの子〉の耳がどこまで良いのかだって知らない。
相手は間違いなく人間じゃない。
だから、普通の人間が聞こえないくらい小さな音すら聞こえてしまう可能性が大いにある。
動いた時の服の布が擦れる音。
呼吸の音。
もしかしたら、心臓の音だって。
この距離の〈あの子〉には、聞こえているのかもしれない。
そう思ったら、余計に心臓がうるさくなった。