わたしはみんなに殺された2〜贖罪の時〜
ペタッ
ゴン!
私の願いのせいか、〈あの子〉はふらりと逆側、つまり右側によろついた。
階段の柵にぶつかる鈍い音がしたけれど、肩をビクリと跳ねさせた私とは対称に、〈あの子〉は顔を歪めることもなく、笑顔を貫いている。
その反動で左に寄って来ないかが心配だった。
別に右側によろついて欲しいわけじゃない。
むしろよろつかず、そのまま通り過ぎていって欲しい。
〈あの子〉は傾げていた首を元に戻した。
ペタッ
また〈あの子〉が一段下がってきて、ついに私と同じ目線になった。
数段差があって、若干〈あの子〉の方が高いくらい。
隣に並んだら、結構小さそうだ。
それを見て、いつか聞いた悠人さんに引けを取らない〈あの子〉の足音の速さを思い出す。
改めて、この身体であの足の速さをしている事実に、〈あの子〉は人間ではないのだと思い知らされた。
ペタペタッ
何を思ったのか、ゆったりとしていたはずの〈あの子〉の足が二歩一気に動いた。
ほんっとにやめてよ、そういうの!
今度は前にふらつきでもしたっていうの?
目の前でそんな行動をされては、心臓が持ちそうにない。
いつの間にか無意識に止めていた息を吸いそうになって焦る。
もう目の前に差し掛かりそうになっているくらい近い。
今息を吸えば、〈あの子〉は確実に聞き取ってくる。
そんな気がした。