わたしはみんなに殺された2〜贖罪の時〜
…そのまま、両者ともにピクリとも動かない時間がどれだけ続いたのだろう。
一瞬だった気もするし、永遠とも思えるほど長かったような気もする。
突如〈あの子〉の身体が、ゆらりと傾いた。
その動きに、止まった時間が動き出したような錯覚さえ覚える。
傾いたまま静止した彼女は、ゆっくりと、けど確実に、ニタァと口角を上げた。
下から笑みを浮かべながら覗き込まれる形になって、ゾワッと身体に悪寒が走る。
これはやっぱり、私の存在を確信したってことだよね…?
だって、これ、確実に。
私の顔に向けて、笑ってるんだもん。
「…ちょーだい?」
「っ!」
顔に似合わず高くて可愛い声を出した〈あの子〉に、肩がビクリと跳ねた。
殺される……!!!
あまりの恐怖に、ギュッと目を瞑る。
もう無理だ…!
ガチガチに固まった足は動きもしないし、抵抗する手段もない。
男の子でさえ簡単に殺されてしまうような相手だ。
私なんかが、敵うわけがない。
カタカタと震え出した私の耳に、ペタペタという軽い足音だけが聞こえてきた。
……え?
…足音?
真っ暗な視界の中、疑問が浮かぶ。
〈あの子〉は…私の目の前にいたはず。
私を殺すなら、ただ、手を伸ばせばいいだけだ。
だから、歩く必要なんてないのに…。
「………?」
数秒経っても、私の身体には何の衝撃も加わらない。
それどころか、その足音は少しずつ遠ざかっていっているような気さえして、恐る恐る、そーっと目を開く。