わたしはみんなに殺された2〜贖罪の時〜
そのままジッとしていると、〈あの子〉と対峙していた時と同じ、でもものすごく平和な、静かな時間が流れる。
…普通なら、こんな真っ暗な学校に一人でいるってだけで相当怖いはずなのにな。
もう感覚が麻痺しちゃったみたい。
今は、安堵感に包まれている。
さっきまでの身体の震えも嘘みたいにすぐなくなったし、荒かった呼吸も何度かの深呼吸で良くなった。
なんだかもう動けるような予感がして、ふぅ、と一呼吸置いてから立ち上がってみる。
私の足は驚くくらいすんなりと、思うように動いた。
よろけることもなく、しっかりと二本の足で立つ。
…うん。もう行ける。
最初…というか悠人さんが囮になってくれた時は、チラッと〈あの子〉を見ただけでかなりの時間動けなくなっていたのに。
人間ってすごいんだなぁ、なんて、他人事のように思った。
グッと足に力を込めて、後半分ほど残っていた階段を一気に駆け上がる。
そしてそのまま、屋上への階段も駆け上がった。
…始まりの場所だ。
ここへ来てからはもちろんまだ1日…いや、半日も経っていないはずだけれど、なんだかここに来るのはもう何週間かぶりな気さえする。
あの時、ドアが1つしかない屋上を危険だと言ったあの3人の言葉が、今ならよく理解できた。
…でも、今〈あの子〉は間違いなく下に降りていった。
ここを調べるなら、今しかない。
そっと、片開きのドアに右手をかける。