わたしはみんなに殺された2〜贖罪の時〜
「…………黒田狛…なんで…」
比較的席の近い結菜ちゃんが、普段より何倍も低い声でそう呟いたのが、確かに聞こえた。
黒田くんも4人の表情に気付いたようで、無表情のままゆっくりと4人を見渡す。
それから…。
「…―――」
小声で、何かを呟いた。
小声すぎて教室の喧騒に掻き消されてしまったから、はっきりとはわからなかったけれど。
動いた口が、『はじまりだ』と言っているように見えた。
はじまり………?
疑問に思っていると、急に黒田くんがこちらを向いて目が合う。
「……………え?」
一瞬。
私に向かって、黒田くんが微笑んだような気がした。
まばたきをした次の瞬間にはもうこちらを向いてはいなくて、さらに無表情に戻っていたものだから、見間違えたのかとすら思えてくる。
だけど、4人の苦虫を踏み潰したような顔と、黒田くんの含み笑いのようなそれは、何故かいつまで経っても私の脳裏に焼き付いて離れなかった。