わたしはみんなに殺された2〜贖罪の時〜




飛びこむ気配は愚か、狛はこちらを見たまま動きもしない。



―――どうして?



どうして飛び込まないの?



…どうして私がいる方を見ているの?



みんなには気付かれないように暗い影に隠れている私は、狛には見えていないはずなのに。



「………やっぱりやめた」



そう呟いた狛は、くるりと光に背を向けた。



その顔はなんだか生き生きとしているように見えて、さっきまでの無表情とは別人のようだ。



………わからない。



狛は、何を考えているんだろう。



「なぁ、お前さ」


「……………」



私は仮にも狛達の命を脅かし、事実数人殺した幽霊だと言うのに、彼が張り上げたその声は確実に私に向けられたものだ。



得体の知れない幽霊に、普通話しかけようと思うだろうか?




ただジッと狛を見つめていると、狛はなぜか急に方向転換をし、真っ直ぐに歩き出した。



なぜか、私に向かって真っ直ぐに。



…やっぱり、バレている。



どうして私の場所がわかったんだろう?



私は透けてなんてなくて、普通の人間のように見えるとはいえ、この世界は暗いし。


ちょっとやそっと目が慣れたくらいじゃ、こっそり見ている私を見つけるなんて無理だと思うんだけど。



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