わたしはみんなに殺された2〜贖罪の時〜
「ねぇ、これ壊れてたよね?」
「あぁ……そこは気にするな。
正直なところ俺にもよくわかんないけど、そういうものだから。
ここでは不思議なことなんて山ほど起こる」
「山ほどって………」
「……悪いけど、そろそろ。
君も早く行かないと置いていかれるよ」
「あっ……!!」
慌ててあの3人が走って行った方向を見るけど、やっぱり影も形もない。
置いていかれるよっていうか、もう置いて行かれてるよ!
「じゃ、そういうことで。
俺はちょっとやることがあるから」
よっ、と言いながら立ち上がる黒田くんに倣って私も立ち上がる。
こんなところでやることって、ほんとに黒田くんは何者なのだろう。
私たちをここに呼んだのもそうだし、明らかに事件の首謀者のように見える。
黒田くんとさっきのラジオの中の女の子が、デッドカースの犯人なのだろうか?
…どっちにしろ、空が消えたり隣校に瞬間移動したり、殺人鬼?なのかはわからないけど〈あの子〉なる人が彷徨いてたり、〈この子〉に至っては人に化けるだなんて、科学じゃ説明できなさそうなことが多すぎるんだけど。
「………………」
「あぁ、そうだ。
これやるよ、役に立つから」
「え?」
ん、と拳を突き出してきた黒田くんに手を伸ばすと、私の手のひらに石のようなものが乗せられる。
「〈この子〉の話は聞いた?」
「えっと…人に化けて〈あの子〉を呼ぶ?」
「そう、それ。
そいつが近くにいると光るんだよその石。
ちなみに、〈この子〉は誰がその石を持ってるのかは知らない。
知られたら、力ずくででも奪おうとするんじゃないか?…ってわけで、扱いには気を付けろよ。
そんじゃ、そういうことで」
…ただの石ころにしか見えないけど、すごいものみたいだ。
まじまじと石を見つめるだけの私が何も言わないうちに、黒田くんはさっさとどこかへ歩いて行ってしまった。
事件の首謀者かもしれないと思ったからか、それを追いかけようという気は起こらなかった。
というか、それよりも。