わたしはみんなに殺された2〜贖罪の時〜
「………………………………あ」
そして、階段を降りた先、2階。
私はもう1階分の階段を降りようとして、ふと廊下に目を向けた瞬間に足を止めることになる。
うっすらと廊下の先に見えるのは、倒れた人影。
「あ……………あ……………」
言葉が出ない。
暗闇の中、少し遠いような近いようなこの距離感でもわかる、人影の周辺の地面に広がった液体。
心なしか、赤みを帯びている。
私はそれがなんなのか、頭では理解していた。
だからこそ心は理解を拒んでいるようで、近付くことが出来ない。
『捕まったら殺される』
芽衣さんの言葉が、頭の中を反芻する。
危険な場所だということは理解したつもりでいたけれど。
いざそれを目の前にすると、まだまだ覚悟が甘すぎたのだと自覚させられる。
「……………………ま」
私がそれをその人だときちんと認識して、その人の名前を呼ぶのに、一体どれだけの時間がかかったのだろう。
時間が止まったように呆然とそれを見つめていた気もするけど、一瞬だった気もする。
私は、やっと1歩を踏み出して。
「………正秀……………くん?」
出ないものを振り絞るように、そう口が動いた。