わたしはみんなに殺された2〜贖罪の時〜
「舞?どうしたの?」
「ううん、なんでもない!
…そうだ、もしかしてさっき何かから逃げてきたの?」
「あっ…!他の出口を探そうってなって、校内を歩き回ってみたんだけど…保健室の前を通りかかったら、なんか気持ち悪い女の子が出てきて…!
あれ、明らかにおかしかったよ!だって、血っ…血だらけ…だったから…」
思い出したのか、結菜ちゃんの語尾が弱まって、顔がサーっと青くなった。
きっと、それが例の〈あの子〉なんだろう。
そんなに気持ち悪かったんだ…。
一目でわかるくらいの見た目だったら、他の人と間違える心配はなさそうだけど。
あまりにもグロテスクな見た目だったとしたら、驚いて腰を抜かしちゃいそうで怖い。
「多分だけど…それが〈あの子〉なんだと思う」
「〈あの子〉って一体なんなの!?
暗くてよく見えなかったけど、小さい女の子っぽかったのに、すごく足が早くて…!
ぼそぼそ何か言いながら追いかけてくるの!」
「なんて言ってたかは聞こえた?」
「うーん…何かちょうだい…みたいな感じだったと思うけど…逃げるのに必死であんまり聞いてなかったよ」
「そっか…じゃあ、みんなとは〈あの子〉から逃げてバラバラになったんだ?」
「うん、そう…。
男子が上の階に行ったらそいつも付いてったから、私は一階で隠れてたの」
「愛菜ちゃんは?」
「…わかんない…。一緒に走ってたと思ってたんだけど、気付いたらいなくて…」
「…そっか。とりあえずみんなを探そう?
〈この子〉に騙されちゃったら大変だし…」
「うん…」
黒田くんについては…まだ何もわからないし。
下手に言って余計に混乱させちゃうのも良くないから、今は会ったことは伏せておいたほうがいいよね。
…正秀くんのことも。
2階のあの廊下はあまり通らないようにしよう。