わたしはみんなに殺された2〜贖罪の時〜
「ん、交渉成立な」
そういって狛はにっと笑った。
あぁ…やってしまった。
なんで身体が勝手に動いちゃったんだろう。
こんな何考えてるかわからなくて、信用できなさそうな人。
いくら…助けてもらえなかった頃の私の姿に重なって見えたとはいえ、そんなの私の気のせいかもしれないのに。
…はぁ。まだ人間らしさが残ってるのかな、私。
もうすっかり同情の心なんて忘れたと思ったけど。
……まあ、そんなことは置いといて、狛も利用できるんならそれでいいか。
そうだよ。私はすでに死んでるんだし。
今更何を恐れる必要があるんだろう?
そう思い直すと、狛を仲間に引き入れることはメリットしかないように思えてきた。
「あぁそうだ。
今更だけど俺の名前は―――」
「―――狛」
狛が言う前に先回りして言うと、そりゃ知ってるわな、とでも言わんばかりの笑みが返ってくる。
「それにしてもいきなり呼び捨てか?」
「狛だって…私のこと、呼び捨てにしたじゃない」
「ん?あぁ、そうだったな。
まぁ、それでいいよ。
………案外話してみると普通の人間だな、お前」
こっちとしては、私より狛が人間じゃないように見えるよ。
幽霊と交渉する人間なんて、色んな意味で怖い。
私よりよっぽど幽霊向いてると思う。
つい言ってしまいそうになる、そんな言葉達を飲み込む。
「……そりゃ、元は人間だもん」
「それもそうか」
ふっと笑った狛に、私は少し眉を潜めて。
それから、小さく笑った。