君はいつも哀しそうで
思わず身動きが取れないままジッと見てしまっていた
「…緒方龍喜くんだよね?」
その高過ぎず低くもない心地いい声色
「…あぁ」
その声に今、俺の身体の中はぐるぐると掻き乱されまくっている
「ごめんね〜美夜ちゃん!
りゅうちゃんってば照れ屋さんだから」
誰がだよ
今すぐしばき倒してやろうか
「ふふっ
違うの。私こそ勝手に座ってごめんね?緒方くん嫌なのかと思って」
普段の彼女がどんな人かなんてわからない
でも、今のその姿が彼女なんだろうか
「いや。…龍喜でいい」
その一言だけで俺が嫌だと思ってないという俺の意思を読み取っていて
その証拠に微笑んでくれた
「なら良かった」
その言葉にその表情に目を奪われてしまう
今日は何の日だろうか
メニューと水を持って帰ってきたなつ
「はいどうぞ」
「ありがとうございます
メニュー持ってきてもらって悪いんですけど、龍喜と同じものお願いします」
ビクッ
俺は何度驚かされれば気が済むのだろう
表情にも態度にも出ていないことを願うが、多分大丈夫だろう
龍喜って…自分でいいって言っておきながら、いざ呼ばれてこれって
…俺は初心か