君はいつも哀しそうで


「一般家庭じゃないんだ私の家。


だから、私は笑っていいような人間じゃない。

悪い人たちかもしれないけど、それでも命を奪っていいはずがないの。

なにの私、笑ってる…だから哀しいの。」



あぁ、聞くんじゃなかった

その言葉の重みも

その声の切なさも

彼女の全てを受け止める覚悟は俺にはない

俺はまだ彼女の隣にも立てていないのに




「ごめんね、こんな話。暗くなっちゃったね」

わざとらしい声に腹が立った

一段と哀しそうな笑顔にどうしようもなく苛立った


俺は自分のこと、高校卒業まで隠すつもりだった

みんな離れていくから

彼女はたとえ俺のことを聞いても離れてなんて行くような人間じゃないって分かってたのに




「…え、ちょっ」

だから、手を引いて走り出した


今、彼女に返す言葉なんてないから走り始めた

それに戸惑いながらも黙ってついてくるあたり、彼女はわかってるのだと思った



俺の心の内なんか彼女には隠せない





隠したって見つかってしまう
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