君はいつも哀しそうで
「ごめんね…これからみーちゃんって呼んでいい?」
遠慮がちにみーに問う
すると、さらに笑顔になって
「いいに決まってるよ。みーちゃんなんて呼んでくれてうれしい」
みーは颯の扱いが上手いらしい
手馴れたものだ
見ていればただの猫とその飼い主みたいに見える
…颯も変われんのかな
中学で出会った時はもっと酷かった
これでも俺と月唯が努力してきたから良くなった方だ
だが、颯夜の家は一層暗黒が増し、昔よりもずっとずっと息の詰まる場所になっている
何でも最近、親父さんが新たな手を打って動き出したらしい
そろそろか…
この場所はいつも耳障りなほど五月蝿いはずなのに
今日は、今日に限って異様なほどの静けさで
その静けさと
目の前に広がるモノクロの汚い世界が
また俺を呑み込んでいく
今宵は満月
満月の月明かりに照らされ暗闇は動き出す