君はいつも哀しそうで
side 隆慎
俺の目の前は返り血で白いシャツが赤く染まった龍喜だけだった
俺はここに辿り着くまで、足止めをしていたとはいえ、馬鹿にならないスピードで突っ切って行く龍喜についていけなかった
俺の先を進む龍喜の姿は圧巻だった
誰がどう見ても獲物に飢えてる獣だった
龍喜が今どんな目でどんな景色を見ているのか、はたまた何も見えていないのか分からないが
それは常に同じだった
自分にとって大切な人を傷つける要因は徹底的に消す
それが誰だろうと容赦ない
今夜の満月がそれを引き立たせているようだ
「隆…」
俺に問いかける声は息の根が止まりそうな声だった
「ん?」
「くだらねぇな」
その言葉の意味は今でもわからない
何度も聞いてきた
“くだらねぇな”
そのままの意味かもしれない。でも
その言葉は絶望を指していた
誰に受け取られるでもなく
また、誰に投げかけるでもなく
今日もまた静けさに呑まれていく