優しい上司の裏の顔〜ツンデレ女子を溺愛中〜(おまけ完)
「…ヒール、折れちゃいましたね」
「・・・」

咄嗟にこけないように、私を支えてくれた藤岡部長が、ポツリと呟いた。

…困った。非常に、困ったことになった。

こんな靴では、最寄駅まで歩くのも一苦労。靴屋なんて、この通りにはなかったな。

タクシーでも、拾えればいいけど。

「ちょっと、待っててください」
「エ、藤岡部長!ちょっと!」

私を花壇の隅に座らせると、道路に向かって走り出してしまった。

・・・見ていると、藤岡部長は、何度となく手を挙げ、数分後。無事に、タクシーを掴まえていた。

「捕まえましたよ、タクシー。行きますよ」
「ヒャッ!…な、何をして」

ありえない、ありえない、ありえない!

藤岡部長に、お姫様抱っこされてしまった。

真っ赤に染まった私の顔。その顔を優しい眼差しで見つめる藤岡部長。

「そこまでですから、恥ずかしかったら、僕の胸に、顔を埋めててください」
「~~~~っ!!」

あ~!もう~!穴があったら、入りたい!

好奇の眼差しで見られてるのは一目瞭然。私は藤岡部長にしがみ付き、顔を隠した。

・・・・。タクシーの運転手にも、変な顔で見られている。

気まずい空気の中、タクシーは、私の住むマンションに着いた。

「ありがとうございました」
「まだですよ」

「もう、本当に、いいですから!」

…私の言葉なんてお構いなしに、結局、お姫様抱っこで、部屋まで行く羽目に。
幸いだったのは、隣人に会わなかった事くらいだろうか。
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