ホワイトデーの奇跡【完】
当然のように後ろからついてきてくれたたまちゃんに
私は勇気を出して――こう言ってから。
『たまちゃん…玄関で待ってて?』
「…えっ」
『私、一人で行ってくる』
「……」
自分の中では、大きな一歩だと思った。
高校に入って、恥ずかしいことだけど
一人で教室に行ったことなんてない。
どこに行くにも、移動するときも
クラスの友達やたまちゃんと一緒だった。
でも、もう…変わりたい。
強くなりたいって本当に思うから。
私の強い意志がたまちゃんにも伝わったのか、小さく頷いてくれた。
「わかった…」
その顔が寂しそうに見えたのは、多分気のせいじゃない…。
親離れじゃないけど
たまちゃんもそんな気持ちなのかもしれない。
『すぐ、戻ってくるね』
「うん」
私は、たまちゃんに背を向けて
階段を駆け上がった。