ホワイトデーの奇跡【完】


「……えっ…どこに、行くの?

ちょっと待ってて、お母さんも今支度して」



『お母さん』




あの頃、お母さんは毎日泣いてた。


毎日泣きはらした目でお見舞いに来られるの辛くて

だから早く良くなりたいって思った。



私のせいで

たくさん悲しい思いをさせてしまった人たちのために

早く元気になって、笑いたいって思ってた。




今ではもう、いっぱい笑える。

たくさんの人のおかげで

心から笑えるんだよ。





『私、一人で行くよ』





「えっ…だって…どうして…どこまで行くの?」






でも、動き出したように見えて

本当は全然動いてなかった。




あの日から、時間が止まってしまったのは私だけじゃない。



たまちゃんも。

お母さんも。

お父さんも。



私が大きく強く歩かないと、動けないんだよね。





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