ホワイトデーの奇跡【完】
『うん…今から帰るね…うん、大丈夫だよ』
靴を履き替えた私は、お母さんに電話をしていた。
着信が入っていたことに気づかなくて
電話の向こうのお母さんは学校まで迎えに行くといってきかない。
確かに18時は夕方だけど…
8月の18時なんてまだまだ明るいのに…。
お母さんの心配性が治るには、まだまだ先みたい。
「電話、貸して」
『えっ?あっ』
私のケータイを武藤くんがヒョイと奪い取る。
「あ、もしもし。初めまして、俺同じクラスの武藤といいます…はい」
『武藤くんっ!』
私よりも30cmは背の高い武藤くん、取り返そうとするも、届くはずもなかった。
「はい、蒼井さんは俺が送っていきますので…はい…いえ」
『えっ…武藤くんっ』
「はい…では、失礼します」
電話の終わった武藤くんが、ケータイを返してくれた。
電話はもちろん切れていた。