ホワイトデーの奇跡【完】
そんなことないっ。
お母さんも。
お父さんも。
たまちゃんも。
たま美さんも。
それで離れていくような人じゃない。
「じゃあ、いいじゃん」
『…うん』
「ってことで、俺の顔も遠慮せず見ていいよ」
『えっ?』
「俺も、その周りの人のうちの一人に入ってるし」
『……武藤くん』
「結局、言いたかったのはそれなんだけどね」
武藤くんの言葉が、心に染みる。
私は、その場に立ち止まったまま
ゆっくりと武藤くんの顔を見上げた。
『……ありがとう』
「どういたしまして」
武藤くんの綺麗な顔が
私を真っ直ぐ見下ろしていた。
ブラウンの瞳が、スッと細く優しくなる。