ホワイトデーの奇跡【完】
「さくらっ…」
『……っ』
龍平さんの綺麗な顔に…ツーっと、涙が流れた。
私を見下ろす顔が、切なくて。
そっと、遠慮がちに
私に触れる手が優しくて。
怖がらせないよう。
怯えさせないように。
私を気遣う姿が――愛おしくて。
「……ごめんっ…しばらく、このままで」
『……は…い……っ』
触れているのかもわからないくらいに、
空気を抱くように、
私を抱きしめる龍平さんの胸の中で。
私は、この思いを過去には出来ないことに気づいた。