ホワイトデーの奇跡【完】
「ハッ…声、出すなよ…ハァッ……」
全く知らない男の人の低い声だった。
男の人のナイフを握る手も
私を脅す声も
私よりもガクガクと震えていて。
それが、余計に、緊張感が伝わって。
『っ……っぅ』
声なんて…出したくても、出せなかった。
私の神経は
自分の意思に反して流れてしまった
太ももに伝う生暖かいものに対しての羞恥心と
死を間近にした恐怖だけだった。
『…っ…っぁ…あ…あ…ぅ…ああ』