東の彦 外伝
金時はがむしゃらに母のもとへと駆けた。山姥のもとへと駆けた。
そして、その膝へと落ちた。
「おっかぁ、おれは間違っていた。おれは人の世界に馴染むことばかり考えて、姫の気持ちなど考えもせず――」
金時は母の膝に幾粒もの大きな涙を落とす。
「人になった気でいた。だが、ただ姫に、母に、頼光様に、綱に、皆に甘えていただけだったのだ。あの時、酒呑童子に言われたとおりだった。鬼はおれのほうだったのだ。ただおれは同胞を殺し、己の罪を増やしただけだった」
山姥はは嗚咽が止まらずにいる息子の話をただ、黙って聞いていた。
(おれは知っていたんだ・・・・・・あの日あの時、、金髪の鬼は姫を襲っていたんじゃない、助けていたんだ。姫の切断されたあの足の傷口に掛けられていたのは鬼の法力,姫の出血を防ぐための・・・・・・そう、俺と同じ鬼の力・・・・・・)
「鬼は己だったというのに姫の想い人を殺してしまった」
(怒りに我を忘れて、あの時既に大事なものを失っていたんだ)
金時は老いた母の手を取った。
「すまない、おっかあ。おっかあを助けられると思っていたのに、おれは、おれでは・・・・・・」
泣きじゃくる息子をまっすぐみつめ、山姥は静かに首を横に振った。
「気に病むことはないよ金の字。おまえを人にできなかったのは私の罪だ。それに、もう自分の侵した罪を消そうなんて思ってはない。儂はもう人になれなくてもいいのだ」
「すまねぇ すまねぇ おっかあ」
「かまわないよ、自分の望みを言ってごらん、金の字。」
「おれ、姫に、二人に、謝りたい」
声を振り絞った金時の告白に山姥は愛しいわが子の背をさすった。
「今までよく頑張ってくれた。儂のせいでつらい思いをさせたね。お前が人であろうと鬼であろうと愛しい儂の子だ。お前の幸せを心から願っているよ」
そう言うと、山姥は二度と人へと戻れない道を辿った。金時の背に置いた山姥の手が柔らかく光りだした。
すると金時は見る間にちいさくなっていき光の中に消えていく。
こうして、金太郎は、もう二度と戻ることのできない人の道を踏み外したのだった。
そして、その膝へと落ちた。
「おっかぁ、おれは間違っていた。おれは人の世界に馴染むことばかり考えて、姫の気持ちなど考えもせず――」
金時は母の膝に幾粒もの大きな涙を落とす。
「人になった気でいた。だが、ただ姫に、母に、頼光様に、綱に、皆に甘えていただけだったのだ。あの時、酒呑童子に言われたとおりだった。鬼はおれのほうだったのだ。ただおれは同胞を殺し、己の罪を増やしただけだった」
山姥はは嗚咽が止まらずにいる息子の話をただ、黙って聞いていた。
(おれは知っていたんだ・・・・・・あの日あの時、、金髪の鬼は姫を襲っていたんじゃない、助けていたんだ。姫の切断されたあの足の傷口に掛けられていたのは鬼の法力,姫の出血を防ぐための・・・・・・そう、俺と同じ鬼の力・・・・・・)
「鬼は己だったというのに姫の想い人を殺してしまった」
(怒りに我を忘れて、あの時既に大事なものを失っていたんだ)
金時は老いた母の手を取った。
「すまない、おっかあ。おっかあを助けられると思っていたのに、おれは、おれでは・・・・・・」
泣きじゃくる息子をまっすぐみつめ、山姥は静かに首を横に振った。
「気に病むことはないよ金の字。おまえを人にできなかったのは私の罪だ。それに、もう自分の侵した罪を消そうなんて思ってはない。儂はもう人になれなくてもいいのだ」
「すまねぇ すまねぇ おっかあ」
「かまわないよ、自分の望みを言ってごらん、金の字。」
「おれ、姫に、二人に、謝りたい」
声を振り絞った金時の告白に山姥は愛しいわが子の背をさすった。
「今までよく頑張ってくれた。儂のせいでつらい思いをさせたね。お前が人であろうと鬼であろうと愛しい儂の子だ。お前の幸せを心から願っているよ」
そう言うと、山姥は二度と人へと戻れない道を辿った。金時の背に置いた山姥の手が柔らかく光りだした。
すると金時は見る間にちいさくなっていき光の中に消えていく。
こうして、金太郎は、もう二度と戻ることのできない人の道を踏み外したのだった。