東の彦 外伝
浦島太郎
むかしむかし とおいむかし 浦島という沖合に住む 漁師がおりました。
名を太郎といい、体の弱い母を支え二人でほそぼそと暮らしておりました。
たろうは釣り竿一本で 数少ないながらも魚を釣り上げ それを売り歩いておりました。
今日も 魚をつろうと沖へ出かけた太郎は 子供達が騒いで遊んでいる所にでくわします。
よく見ると 亀をいじめて遊んでいる所でした。
普段はおとなしく控えめな性格の太郎でしたが
子供達に蹴られ つつかれている亀の目があまりにも不憫で
子供達の輪に割り込みます。
「生き物をむやみに いじめるのは、おやめなさい。」
「なんでぇ しらねぇおじさんが 口出すなぁ」
「おっとうたちが 海沖で遊んでこお言たんでぇ」
太郎は弱りながらも こう言いました。
「では、お駄賃をあげるから その亀を わたしに譲りなさい」
懐から出したわずかながらの お金を子供たちの手にのせます
「じゃあ 仕方ないなあ〜」
子供達は、そう言いながらも嬉しそうににやつきながら 陸ねと駆けてゆきました。
「おっかあの薬代だったが、しかたねぇ・・・今日は倍稼がねぇと」
太郎は大きくため息をついて 金袋をみつめていると 足もとで亀が
もがいていました。
傷ついた亀を手に乗せ太郎は微笑みます。
「いてぇとこねぇか しょうのねぇ 子めらだことな 許してやってくれ」
亀はきゅうと鳴いたようでした。
「今、鳴いたか? 亀が鳴いたの初めてきいた」
すると、手にのっていたと思っていた亀が 急に靄のようなものが現れたかと思うと
幼い人間の童の姿へと変わっていました。
太郎は腰を抜かして驚きます。
「おっおなんこ!? かっ亀は!!?」
目の前に現れた 童は口を開きます。
「助けて頂きありがとうございました。聞けば、お母様のお薬代を使ってしまわれたとか どうか御礼とお詫びをさせて下さいまし。」
童は太郎の腕を掴み 海のほうへと引っ張り出しました。
「なっなにを」
慌てる太郎に童は笑顔で応えました。
「決して、わたしの手を話さないで下さいね。 あとわたし本調子ではありませんから 時間がかかってしまいますが、少し我慢して下さいませ」
童の言う通り童子はあちらこちらが傷だらけでありました。
そんなことを思っていると、太郎はいつのまにか腰まで海水に浸っていることに気が付き
再び慌てふためきます。
童は そんな太郎をお構いなしに どんどん海の方へと潜って行きます。
「いいですか。おもいっきり息を吐いて下さい。
そして決して手を離してはなりません 決してですよ。」
太郎は童の言う事を聞けたかどうかわからなかったが、もう既に童に導かれ海の中を彷徨っていた。童が ゆっくりとした口調で話しかけます。
「大丈夫ですよ。目を開けて下さい。ゆっくりと息をしてみて下さい。」
海の中だと言うのにはっきりと聞こえる童子の声に太郎は従います。
「息ができる 海の中を普通に歩いている」
驚く太郎に亀は笑います。
「本当は息をしている訳ではないのですが、大丈夫でございましょう。このくらいの法力でしたら わたしにも使えますので お名前をお聞きしてよいですか?わたしは小亀と申します。」
「たっ太郎じゃ 沖の浦島のに住む太郎・・・」
訳の分らないまま返事をする太郎に小亀と名のった童は また笑います。
「浦島の太郎様ですか。普段なら竜宮まで 一っ飛びなのですが
今日は体が痛くて 上手いように泳げません。少々歩きますが、少しお付き合いください。ただ、竜宮につくまではまだ手を離してはなりませんよ わたしの法力が切れてしまいます。」
何を言っているのか未だに飲み込めない太郎だったが、少し落ち着いて口を開いてみた。
「本当にお前さんは亀なのか」
「はい」
「本当にわしが助けた亀か」
「はい」
亀は振り向きはしなかったが軽快に答えた。
「竜宮とはなんじゃ」
小亀は笑顔で振り向いた。
「着きましたよ。目の前にあるのがわたしの仕える姫がおわされる竜宮城です。」
太郎は 海のそこにある御殿に目を回す。
「なんじゃ、この城は」
どれほどの時間 、歩いていたか もう感覚がなくなっていたが いつの間にか海の景色が一変していました。
日本の建物とはまた違う風情の見たこともない 大きな屋敷がそこにはありました。
「ここにおわす姫は とってもお心優しき方です。少しここで待っていて下さいね。」
そう言うと竜宮の中へと入って行きました。
不思議な格好をした門番らしきものがマジマジと自分を見てくるのに 居ても経ってもいられず 待っていると、小亀が嬉しそうにでてきました。
「わたしを助けて下さった御礼に 姫が御馳走をふるまってもよいと言って下さいました。今、準備をしておりますので どうぞこちらへ」
またもや 小亀に腕を引っ張られ太郎は竜宮城の中へと入ってゆくのでした。
太郎は大広間へと通されると そこには多くのご馳走が並んでおりましたが
なぜか魚介類は並んでいませんでした。
奥の扉が開くと太郎は目を見開きました。
小亀に手を引かれ 奥座に座るその姿に 太郎は息をのみます。
薄布越しではありましたが、高貴さも品のよさも全てが 部屋の空気を変えてしまうほどの
神々しさでした。
「どうぞ、召し上がってくださいまし、太郎様。」
微笑んでいるようにみえるそのお顔から発せられたその声にも太郎は目がくらみました。
涼やかで 品があるのに かわいらしく
まったく動こうとしない太郎に 姫はまた声をかけました。
「はじめての光景に驚かれたかも知れませんが、どうか緊張なさらずに くつろいでくださいまし。 この度は小亀を救ってくださいましてありがとうございました。 普段はここにわたくし一人しかおりません故 たいしたものを置いていないのですが、皆に他所から食事を運ばせましたので 是非ご賞味くださいませ。」
しかし、やはり奥座を見つめ動こうとしない太郎に小亀が近寄ってきました。
「こちらがここの主の桃姫様です、太郎様。」
「あらあら、わたくしったら名乗りもせず。 ずっと屋敷に籠りっぱなしで、久々にひとにお会いしたものですから、大変、失礼いたしました。竜宮の主の桃のさくやと申します。不出来なわたくしの世話を小亀にしてもらっておりまして 小亀を助けていただき誠に感謝申し上げます。」
「人間様の食べるものをと 急ぎましたので お口に合わないものがあったのでしょうか?」
小亀の声に太郎はあわてて俯きます。
「いっいや 姫様がおっおきれいで・・・・・・・」
どんどん小さくなる声に発した自分自身がはずかしくなり 太郎はますます俯きました。
「太郎様 魚たちが舞を見せてくれるそうですよ。」
小亀が そう言って太郎の腕を揺らします。
「まぁまぁ、小亀ったら お客様を そのように」
そういいつつ姫はうれしそうに二人を見つめるのでした。
すると どこからか様々な魚がやってきて 部屋の隅々を泳ぎだしました。
魚の舞とやらが どんなものかよくわからない太郎でしたが 部屋を泳ぐその色とりどりな魚は大変きれいなものでした。
名を太郎といい、体の弱い母を支え二人でほそぼそと暮らしておりました。
たろうは釣り竿一本で 数少ないながらも魚を釣り上げ それを売り歩いておりました。
今日も 魚をつろうと沖へ出かけた太郎は 子供達が騒いで遊んでいる所にでくわします。
よく見ると 亀をいじめて遊んでいる所でした。
普段はおとなしく控えめな性格の太郎でしたが
子供達に蹴られ つつかれている亀の目があまりにも不憫で
子供達の輪に割り込みます。
「生き物をむやみに いじめるのは、おやめなさい。」
「なんでぇ しらねぇおじさんが 口出すなぁ」
「おっとうたちが 海沖で遊んでこお言たんでぇ」
太郎は弱りながらも こう言いました。
「では、お駄賃をあげるから その亀を わたしに譲りなさい」
懐から出したわずかながらの お金を子供たちの手にのせます
「じゃあ 仕方ないなあ〜」
子供達は、そう言いながらも嬉しそうににやつきながら 陸ねと駆けてゆきました。
「おっかあの薬代だったが、しかたねぇ・・・今日は倍稼がねぇと」
太郎は大きくため息をついて 金袋をみつめていると 足もとで亀が
もがいていました。
傷ついた亀を手に乗せ太郎は微笑みます。
「いてぇとこねぇか しょうのねぇ 子めらだことな 許してやってくれ」
亀はきゅうと鳴いたようでした。
「今、鳴いたか? 亀が鳴いたの初めてきいた」
すると、手にのっていたと思っていた亀が 急に靄のようなものが現れたかと思うと
幼い人間の童の姿へと変わっていました。
太郎は腰を抜かして驚きます。
「おっおなんこ!? かっ亀は!!?」
目の前に現れた 童は口を開きます。
「助けて頂きありがとうございました。聞けば、お母様のお薬代を使ってしまわれたとか どうか御礼とお詫びをさせて下さいまし。」
童は太郎の腕を掴み 海のほうへと引っ張り出しました。
「なっなにを」
慌てる太郎に童は笑顔で応えました。
「決して、わたしの手を話さないで下さいね。 あとわたし本調子ではありませんから 時間がかかってしまいますが、少し我慢して下さいませ」
童の言う通り童子はあちらこちらが傷だらけでありました。
そんなことを思っていると、太郎はいつのまにか腰まで海水に浸っていることに気が付き
再び慌てふためきます。
童は そんな太郎をお構いなしに どんどん海の方へと潜って行きます。
「いいですか。おもいっきり息を吐いて下さい。
そして決して手を離してはなりません 決してですよ。」
太郎は童の言う事を聞けたかどうかわからなかったが、もう既に童に導かれ海の中を彷徨っていた。童が ゆっくりとした口調で話しかけます。
「大丈夫ですよ。目を開けて下さい。ゆっくりと息をしてみて下さい。」
海の中だと言うのにはっきりと聞こえる童子の声に太郎は従います。
「息ができる 海の中を普通に歩いている」
驚く太郎に亀は笑います。
「本当は息をしている訳ではないのですが、大丈夫でございましょう。このくらいの法力でしたら わたしにも使えますので お名前をお聞きしてよいですか?わたしは小亀と申します。」
「たっ太郎じゃ 沖の浦島のに住む太郎・・・」
訳の分らないまま返事をする太郎に小亀と名のった童は また笑います。
「浦島の太郎様ですか。普段なら竜宮まで 一っ飛びなのですが
今日は体が痛くて 上手いように泳げません。少々歩きますが、少しお付き合いください。ただ、竜宮につくまではまだ手を離してはなりませんよ わたしの法力が切れてしまいます。」
何を言っているのか未だに飲み込めない太郎だったが、少し落ち着いて口を開いてみた。
「本当にお前さんは亀なのか」
「はい」
「本当にわしが助けた亀か」
「はい」
亀は振り向きはしなかったが軽快に答えた。
「竜宮とはなんじゃ」
小亀は笑顔で振り向いた。
「着きましたよ。目の前にあるのがわたしの仕える姫がおわされる竜宮城です。」
太郎は 海のそこにある御殿に目を回す。
「なんじゃ、この城は」
どれほどの時間 、歩いていたか もう感覚がなくなっていたが いつの間にか海の景色が一変していました。
日本の建物とはまた違う風情の見たこともない 大きな屋敷がそこにはありました。
「ここにおわす姫は とってもお心優しき方です。少しここで待っていて下さいね。」
そう言うと竜宮の中へと入って行きました。
不思議な格好をした門番らしきものがマジマジと自分を見てくるのに 居ても経ってもいられず 待っていると、小亀が嬉しそうにでてきました。
「わたしを助けて下さった御礼に 姫が御馳走をふるまってもよいと言って下さいました。今、準備をしておりますので どうぞこちらへ」
またもや 小亀に腕を引っ張られ太郎は竜宮城の中へと入ってゆくのでした。
太郎は大広間へと通されると そこには多くのご馳走が並んでおりましたが
なぜか魚介類は並んでいませんでした。
奥の扉が開くと太郎は目を見開きました。
小亀に手を引かれ 奥座に座るその姿に 太郎は息をのみます。
薄布越しではありましたが、高貴さも品のよさも全てが 部屋の空気を変えてしまうほどの
神々しさでした。
「どうぞ、召し上がってくださいまし、太郎様。」
微笑んでいるようにみえるそのお顔から発せられたその声にも太郎は目がくらみました。
涼やかで 品があるのに かわいらしく
まったく動こうとしない太郎に 姫はまた声をかけました。
「はじめての光景に驚かれたかも知れませんが、どうか緊張なさらずに くつろいでくださいまし。 この度は小亀を救ってくださいましてありがとうございました。 普段はここにわたくし一人しかおりません故 たいしたものを置いていないのですが、皆に他所から食事を運ばせましたので 是非ご賞味くださいませ。」
しかし、やはり奥座を見つめ動こうとしない太郎に小亀が近寄ってきました。
「こちらがここの主の桃姫様です、太郎様。」
「あらあら、わたくしったら名乗りもせず。 ずっと屋敷に籠りっぱなしで、久々にひとにお会いしたものですから、大変、失礼いたしました。竜宮の主の桃のさくやと申します。不出来なわたくしの世話を小亀にしてもらっておりまして 小亀を助けていただき誠に感謝申し上げます。」
「人間様の食べるものをと 急ぎましたので お口に合わないものがあったのでしょうか?」
小亀の声に太郎はあわてて俯きます。
「いっいや 姫様がおっおきれいで・・・・・・・」
どんどん小さくなる声に発した自分自身がはずかしくなり 太郎はますます俯きました。
「太郎様 魚たちが舞を見せてくれるそうですよ。」
小亀が そう言って太郎の腕を揺らします。
「まぁまぁ、小亀ったら お客様を そのように」
そういいつつ姫はうれしそうに二人を見つめるのでした。
すると どこからか様々な魚がやってきて 部屋の隅々を泳ぎだしました。
魚の舞とやらが どんなものかよくわからない太郎でしたが 部屋を泳ぐその色とりどりな魚は大変きれいなものでした。