夏とラムネと入道雲
夏
会計の時、あたしはあえて気付かないフリをして応対した。
商品のバーコードをうっている時に聞こえてきた二人の会話。
「いつもはお茶買うのに何で今日はラムネ?炭酸なんて珍しいね!」
彼女が問い掛けるように商品の中にはあの日と同じ。期間限定で置かれている瓶のラムネ。
「なんか懐かしいから…。入道雲思い出すんだよね。」
優しく彼女に答える男の子。
何だよ。あたしと同じ。覚えていてくれたんだ。吹き出しそうになったけど我慢した。
「ありがとうございました!」
満面の笑みでラムネの入った袋を手渡すあたし。
よかったじゃん。
心の底から思うよ…幸せそうで本当によかったね。
二人はまた手を繋いで暑い外へと去っていく。
その後ろ姿を微笑ましく見ているあたしに隣の先輩が話し掛けてきた。
「ね!なつみちゃん…明日の花火大会よければ一緒に行かない?」
「へ?」
それはあたしの人生、生まれて初めての恋の始まり。
「ふ、二人でですか?!」
「ん。ダメ?」
思いっきり顔を横にふるあたし。