夏とラムネと入道雲
ラムネ
あたしはまた店の中に入ってラムネを一本手に取る。
「おばちゃん!もう一本もらうね!!」
そう言ってまた百円をレジの横に置いてベンチに座っている男の子に手渡した。
「なんか…超感動したっ!!彼女との遠距離頑張って!!」
あたしの唐突な行動にポカンとしている男の子は少し笑ってラムネを手に取る。
「…ありがとう。」
ううん。お礼を言うのはあたしのほうだ。
世の中には会いたくても会えない切ない恋愛をしている人もいるんだね…
こんな暑い天気に外に出て県外の彼女に送るための写真を一生懸命撮っている男の子。
なんて一途。素敵な彼氏。この人の彼女が羨ましくなってしまった。
「あ、彼女からだ。」
一通のメールが彼女から男の子の携帯に受信されてそのメールを見て嬉しそうに笑う。
「あっちも同じ天気!」
そう言ってあたしにも写メを見せてくれた。真っ青の空にもくもくともられた入道雲。
「よかったね!じゃ、あたし買い物の途中だからまたね!」
「うん。またね!」
“またね”なんて。お互い名前も歳も知らない。でもいつかまた会える気がしたんだ。