プルオーバー
「今日も寒いね」
僕が隣に来たところで、彼女が目尻をあげて笑った。
その笑顔が直視できず、君の腕、伸ばした袖口に目線を落とす。
いつものように君の好物であるホットココアがそこにいて、ちょこっと覗いた白い指を温めている。
その指を、ココアじゃなく僕の手で温めたい。
なんて、思ったり。
心の中ではこんな、しょうもないことを考えているけれど、実際の僕は緊張して何も話せない。
君が話すことに対して、相槌を打つだけ。