君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)

「つぶしの効く業種なのかもね」

「大塚さん、彼氏います?」



…ん?

唐突な質問に、思わず顔を見る。

少し明るくした髪が、窓から差し込む光で金色に透けて見える。

眼鏡の奥で、瞳が微笑んだ。



「うーん…」



なかなかかっこいい子だなあ、と思いながら、質問の返答を考える。

もちろん新庄さんのことが浮かぶけど、あの人を「彼氏」と呼ぶのは違和感がありすぎて、いまだにそんなふうに考えたことがない。



「微妙な相手がいるんですか」

「微妙といえば、微妙だね…」

「してないから、ラッキーと思ったのに」



指輪。

そう言われて、ようやく気がついた。

これは…もしや。


ふいに、それまでにぎやかに音を立てていた機械が静まり返って、コピーが終わったことを知らせる。



「同期に、若くて可愛い子、いっぱいいるでしょ」



これで流せますように、と祈りながら、資料を取り出して整える。

それを横から取りあげて、三ツ谷くんが言った。



「俺、院卒で、2年休学して海外行ってたんで」



同い年ですよ。



< 10 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop