君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「つぶしの効く業種なのかもね」
「大塚さん、彼氏います?」
…ん?
唐突な質問に、思わず顔を見る。
少し明るくした髪が、窓から差し込む光で金色に透けて見える。
眼鏡の奥で、瞳が微笑んだ。
「うーん…」
なかなかかっこいい子だなあ、と思いながら、質問の返答を考える。
もちろん新庄さんのことが浮かぶけど、あの人を「彼氏」と呼ぶのは違和感がありすぎて、いまだにそんなふうに考えたことがない。
「微妙な相手がいるんですか」
「微妙といえば、微妙だね…」
「してないから、ラッキーと思ったのに」
指輪。
そう言われて、ようやく気がついた。
これは…もしや。
ふいに、それまでにぎやかに音を立てていた機械が静まり返って、コピーが終わったことを知らせる。
「同期に、若くて可愛い子、いっぱいいるでしょ」
これで流せますように、と祈りながら、資料を取り出して整える。
それを横から取りあげて、三ツ谷くんが言った。
「俺、院卒で、2年休学して海外行ってたんで」
同い年ですよ。