君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「経験値が多いぶん、同期の女の子じゃ物足りないんだろうね」
「あの頃に、4年違うって、けっこう違いますもんね」
堤さんと彩が口々に言う。
そういえば、私と新庄さんの差も4年だ。
新庄さんが、今の私と同じ年次の時に、私は新人として6部に入ったんだ。
彼の目に、私はどう映っていたんだろう。
やっぱり、子供っぽかったんだろうか。
「まあ、2週間ちょっとの辛抱だし」
彩がなぐさめてくれる。
「新庄さんとうまくいってるなら、気にすることないじゃん」
げっ…。
案の定、堤さんがこちらを見て、嫌な笑いを浮かべた。
「この間は、ごめんね」
「いえ…」
ごめんで済む話か、と思いつつも、一応上司なので言うのは控える。
なになに? と訊く彩に、堤さんが誕生日の一件を説明すると、予想どおり彩は大喜びし、やるう、と堤さんを褒めたたえて、爆笑した。
「もー、おなか痛い…で、何してたとこを邪魔されたわけ?」
涙を浮かべて訊く彩に、思わず私は顔を赤らめて、何も言えなくなってしまう。
ふたりは、まさか、という顔をした後、私たちの状況をすべて察したらしく、もう笑いに笑って。
「あいつが、そんなところで苦戦…」
「あたし、今度新庄さんの顔見たら、絶対笑っちゃう」
同感、と笑い転げるふたりを見ながら、私はどうかここでのやりとりが当人に伝わりませんように、と祈るしかできなかった。