君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「終わったなら、見せて」
「そういう、わかりやすい顔しないほうがいいですよ」
可愛いから。
聞こえなかったふりをして、三ツ谷くんの入れた朱をチェックする。
けど内心は、動揺どころじゃなくて、恥ずかしさと悔しさでいっぱいだった。
コンコン、とドアが叩かれて、堤さんが顔をのぞかせた。
「ここ、16時から使っていいかな」
「あっ、はい、すぐ出ます」
ちょうどチェックも終わったので、校正用紙を片づける。
高木さんの席に置いておきます、と三ツ谷くんがそれを持っていってくれた。
ドアをくぐる時、すれ違いざま、堤さんがポンと私の肩を叩いて、励ますように押し出してくれる。
みっともなくて、堤さんの顔を見られなかった。
つまるところ私は、ナメられてる。
いいようにからかわれている。
同い年とはいえ、新入社員に。
可愛い、なんて。
新庄さんにも、言われたことないのに。