君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)

「いつ頃まで、忙しいんですか」

「上期中は、こんな調子だな」



上期って、まだ始まったばかりなのに…。

いくら新庄さんとはいえ、身体がもつんだろうか。


具体的には、どんな仕事をしてるんだろうと思って訊いてみると、予想以上にスケールの大きい話を聞かされた。



「広告効果を可視化できるシステムを作ってた話は、知ってるか」

「はい、プロトタイプを見ました」



マーケで発案されたシステムで、業界でも画期的なものだ。

これまで難しかった、あらゆる広告と購買行動の関係を、横断して分析することができる。



「そのシステムの正式な導入に向けての整備、拡張が当面の目標」

「当面じゃない目標は?」

「言ってしまえば、そのデータ内の消費者を、特定の個人と結びつけることだ」



個人情報は、何かというとアンケートなどで吸いあげるのが当たり前の時代だけど、それらをなかなか活用しきれていないのが現状だ。

情報が、購買時というごく狭いタイミングのものに限られていることや、企業内でも別々の部門がばらばらに情報を持っていたりすることが原因だ。



「けど今どきネットを見れば、誰が、何に影響されて商品を買って、利用して、何かしらの感想を持って」

「手放したり、人に薦めたり」

「そう、そういう情報が、いくらでも転がってる」

「でもそれは、企業の持っている顧客情報とつながっていない、と」

「そうだ。ゆくゆくは、それらの情報をつなぎあわせて、個人の消費の流れの全過程を追えるようにする」



てのが、最終目標なんだが、と続ける。



「まあ、だいぶ先の話になるだろうな」



そうだろう。

聞いているだけで目の回りそうな話だ。

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