君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「だから第一段階としては、企業や代理店内に点在している顧客情報を統合すること」
「なるほど」
「それをシステムに入れて、企業が自分で効果を分析できる環境を提供すること」
「でもそれだと、代理店の仕事が減りません?」
「逆だ。俺たちは今以上に手広く企業に協力できるようになる。それこそ、カスタマーサービスにも手を出せる」
ため息が出た。
つまりは、これまでの仕事のやりかたを、代理店もクライアントも、根本から変えるってことだ。
想像もつかない世界。
そりゃ、忙しいはずだ。
「頼むぜ、営業にうまく使ってもらってこその仕組みなんだからな。俺たちはあくまで、ただのバックアップだ」
やぶへびで、プレッシャーまでもらってしまった。
お台場のホテルで早めの夕食をとって、新庄さんの家のある横浜方面へ向かう。
レインコンディションのドライブは、ある意味痛快で、好きなのに、天気と同じく私の心は、どこか晴れなかった。
私、レベル低くないか?
新人に、あんな扱いを受けて。
特に何か、目立った能力があるわけでもなくて。
別に、新庄さんと比べるなんて、とんでもない思いあがりはしないけど。
今の私の仕事を、私がする意味って、何か、あるだろうか。