君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
珍しくお酒を買って、新庄さんの家に上がった。
新庄さんが、気晴らしに飲みたい、と言ったからだった。
新庄さんも私も、ひとりでお酒を飲むことはなく、家にアルコールがない。
少しくらいでは酔わないので、飲むだけ無駄だからだ。
ほろ酔いになるまで毎日晩酌したら、破産するか身体を壊すかするだろう。
お互い、その事情を、すごくよくわかる、と言いあったことがあった。
「今日、何か変だな?」
どっさり買ったお酒を、リビングのテーブルに並べていると、新庄さんが言う。
「そんなことないです、飲みましょう」
焼酎の水割り缶を渡しながら、あえて明るく言う。
私も同じものを開けて、特に何も言わず、缶を合わせる。
ラグに並んで座って。
新庄さんはソファに背中を預けているけれど、私はなんとなく、背筋を伸ばして飲んでいた。
後ろから、頭を柔らかくかき回される。
「どうした」
気遣うような声。
新庄さんの、せっかくのたまの休みに、こんなに気を遣わせてどうするの。
「言いたくないなら、無理しなくていい」
黙っていると、優しくそう言われた。