君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
さすがに新庄さんが動きをとめた。
玄関で、靴を脱ぐ気配がする。
「新庄さん…」
どうしたらいいのかわからなくて、肩口にある新庄さんの顔を見る。
新庄さんは、五たび入った邪魔に、完全に脱力した様子で。
少しの間、がっくりと頭を垂れていたと思うと、苛立ったような息をついて、がばっと立ちあがり。
びっくりしたことに、シャツも着ないまま荒々しくドアを開閉して、玄関へ出ていった。
ドア越しに、声が聞こえる。
「帰れ」
「いるなら返事してよ。何そのだらしない恰好」
「上がるな、帰れ」
女の人は、意にも介さず上がりこんできたらしい。
足音がこちらへ来る。
まずい。
慌てて服を整えていると、リビングのドアが開けられた。
すかさず新庄さんが、そのドアを引き戻しながら、おい、と声を荒げる。
――――えり!
はい! と叫んでしまってから、気がついた。
私、たぶん。
間違えた…。