君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「…誰か来てるの?」
バカだ、私…。
新庄さんが、あきらめたように顔に手をあてて、ドアを放すのが見える。
そこから、女の人が顔をのぞかせた。
綺麗な人。
新庄さんが、ため息をついてドア枠にもたれながら、私を手招きする。
急いで立ちあがって、ついでに新庄さんのシャツを持って、ドアのほうへ向かった。
新庄さんは顎でおざなりに女の人を指すと、受けとったシャツを頭からかぶる。
もう、紹介されるまでもなかった。
「妹の、絵里だ」
やっぱり…。
「事前に連絡しろって、言ってるだろ」
「したわよ。仕事用の携帯にまでかけたのに、出なかったんじゃない」
何も言えずに、新庄さんが黙って煙草に火をつける。
「玄関に靴もなかったし」
「すみません…」
つい謝る。
私の靴は、雨で濡れたから、浴室で乾かしているところだった。
いやー、こっちこそごめん、と明るく笑ってくれる絵里さんは、新庄さんと同じ、黒いまっすぐな髪を重くならない程度に胸元まで綺麗に伸ばしていて。
165センチある私より、さらに少し高い。
はっきりしてるけど涼しげで、整った顔立ち。
やっぱり性別が違うから、異なる部分はたくさんあるけれど、それでも見た目の雰囲気が、まったく同じだ。
間違いなく、これは兄妹だ。