君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「恵利ちゃんと話したいもん」
そう言ってくれた絵里さんも一緒に、リビングのテーブルを囲む。
テーブルの上にあったお酒を遠慮なく空けながら、はいこれ、と名刺をくれた。
大手化粧品メーカーの、宣伝部署の、主任さん。
あれ? これって…。
「お得意様じゃないですか…!」
しかも、うちの局のクライアントだ!
新庄さんを見ると、なんだか嫌そうな顔でうなずく。
「なんだ、社内なの?」
「すみません、名刺の持ちあわせがないんですけど、私も11営なんです、6部で」
「えっ、6部って…」
目を丸くして、私と新庄さんを、交互に指さす。
「貴志、あんた、ついに部下食っちゃったの!」
あけすけな言いかたに、つい赤面して、うつむく。
まだ食ってねえ、と低く吐き捨てる新庄さんに、ムード、お願いしますね…と何度目かになる祈りを捧げた。
幸い絵里さんには聞こえなかったらしく、最低、と楽しそうに笑っている。
「名前で呼ばれてるんですね…」
もしかして、意外と家庭内の地位が低いんだろうかと訊いてみると。
「同い年だからな」
「同い年?」
一瞬、理解できなかった。
「双子なの、私たち」
「ええっ?」
でも、これ言われるの、あんた嫌なんだよね~、と冷やかすように、絵里さんが新庄さんの頭をかき回す。
うわあ。
ここまで新庄さんを好きに扱う人って、初めて見た。