君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「えっ、ええと…」
「こんな愛想ないの、怖かったでしょ、最初」
最初…。
「…実は、よく覚えていないんです。新人だったもので」
「そうかあ、じゃ、あんたは」
それまで水割りを作っていた新庄さんは、めんどくさくなったのか、ロックというかもはやそのまま飲みはじめていた。
絵里さんの投げかけに、ちょっと考えて答える。
「いい営業になると思ったよ」
私は。
嬉しくて。
だけど、申し訳なくて、いたたまれなかった。
そんなふうに思ってもらえるほど、私は、いい仕事をしていないんです。
がむしゃらに今まで頑張って、仕事は好きで。
誇りも持って、やってきたけど。
自分が何を残せてるのか、わからない。
うつむいた私の頭を、新庄さんが優しく叩いた。
「どうした」
私は、さすがに酔ってきたみたいです、とごまかして。
絵里さんの前だからか、新庄さんも、それ以上は追及せずにいてくれた。