君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「今度の彼氏って、かっこいい?」
アイスティを飲みながら、奈保が訊いてくる。
見にいった部屋は確かによさそうで、私からも両親に電話を入れて、そこで決めてもらった。
出てきたついでにふたりで買い物をして、デパート内のカフェでひと休みをしているところだ。
「うーん…」
考えてしまう。
彼氏って感じでもない、というのは、妹に言っても仕方ないので、いいとして。
あのかっこよさは、18歳の大学生に果たして通じるのだろうか。
「30歳って、どういうイメージ?」
「…おじさんかなあ」
だよね…。
人にもよるけど、というフォローを入れてくれる奈保に、一応お礼を言った。
「秀二くんとどっちがかっこいい?」
「秀二は、かっこいいってタイプじゃなかったでしょ」
「嘘、かっこよかったよ」
そうか、奈保の目には、秀二は「かっこいい」なんだ。
そうすると、ますます新庄さんに対する評価に不安が出る。
「車だけ見たけど、なんかガラ悪そう」
「言っとくけど、地元を走ってる下品なシャコタンとは、方向が全然違うからね」
「え、そうなの?」
ちなみに秀二も同じ車だったんだよ、とか言ったらいらない突っこみを受けそうだったので、やめておいた。
うーん。
奈保がもう少し世間を知るまで、新庄さんは会わないほうが、いいかもしれない。