君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
寝ているとばかり思ったのに、起こしてしまっただろうか。


「すみません、私もう、失礼しますね」


いつの間にか目を開けて私を見ている新庄さんに、そう伝えると。


いろよ。


かすかな声が聞こえた。


「え?」


訊き返しても、答えはなく、新庄さんは、また目を閉じてしまう。
私の手は、握られたままで、他にどうしようもなくて、また床に腰を下ろした。

同じ高さにある、新庄さんの寝顔を見る。

腕で、顔を覆うようにして寝ている。
胸が、苦しそうに上下している。

新庄さんのような活動的な人にとっては、なおのこと、こんな状態は歯がゆいに違いない。
つかまれている手が、尋常じゃなく熱い。

何か飲んで、汗を出してほしいんだけど、起こすのもかわいそうで、できずに。

次第に薄暗くなってくる部屋で、私はしばらく、新庄さんと手をつないだまま、座りこんでいた。



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