君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
考えようによっては、いい機会なのかもしれない。
これを機に、身体を休めてほしい。

気がつくと、もう出なきゃいけない時刻になっていて。
そろそろと手を放すと、本格的に眠ってしまったのか、新庄さんは反応しなかった。


電車で2時間半ほどかけて、イベント会場に着く。
今日はもう閉場しており、引き継ぎも兼ねて、スタッフの夕食に合流した。


「大塚さんが、リコールのQ&A作ってくれたの、助かったよ」


一日の仕事の後でぐったりと疲れた様子の高木さんが、力なく笑う。


「けっこう問い合わせ、ありましたか」
「そこそこね。報道もされたから」


体力をつける、という目的に沿って、夕食はわかりやすく焼き肉だった。


「来場はどうでした?」
「かなりあったよ。明日はさらに天気がいいらしいから、今日を上回るだろうね」
「じゃあ、私は入り口整理に回ります」
「うん、よろしく」


同席している、クライアントのイベント担当である本間さんが口を開いた。


「三ツ谷さんは、新人さんとは思えないくらい、頼もしいですね」
「何か、経験あるんじゃないかと思ったけど、違う?」


私の向かいの堤さんが、それを受けて三ツ谷くんに尋ねた。
隣りに座っている三ツ谷くんが、鋭いですね、と控えめに笑う。


「テーマパークで、長いことバイトしてたんです」


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