君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「いいね」
言われてみれば私は、Tシャツにショートパンツという恰好で。
普段からこの恰好なので、特になんとも思っていなかったんだけど、こうしてじろじろ見られると、さすがに恥ずかしい。
「そういうふうにくつろぐ前に、と思って来たんだけど、着替えるの早いね」
そういう堤さんは、ネクタイこそ外しているものの、まだワイシャツ姿だ。
誰か来るなんて思ってなかったから、と自分に言い訳しながら、他に場所がなくて、ベッドに腰を下ろす。
「君はよくやってるよって、言われないと不安?」
堤さんが、いきなり核心を突いてきた。
飲もうとしていた缶ビールを、落としそうになる。
何か返事をしようと思うけれど、何を言ったらいいのか、さっぱりわからない。
「そういうのは、周囲に失礼だね」
ビジネスホテルの、決して広くないシングルルームで、ひざを突きあわせるようにして。
私は堤さんのほうを見ることができず、手元の缶に目を落とした。
失礼…。
「仕事は、忙しいよね」
「はい…」
「それは、周りから仕事をもらってるからだ。大塚さんだから頼んでるのに、それでも不安がるのは君を選んだ人への、侮辱になるよ。」
静かに言われて、顔を上げる。
堤さんの顔は、優しいけれど、笑っていない。
「…私は、何ができるんだろうと」
「そういうのは、考えるだけ無駄だから、やめなさい」
机に片ひじをついて、ぴしゃりと言った。