君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
私は、上司運がいいのかもしれない。
そんなことを考えながら、帰りの電車に乗った。
イベント2日目は大盛況で、朝からひっきりなしの入場があり、対応だけでへとへとになった。
夕方に閉場し、みんなで夕食をとる流れになったのだけれど、私は新庄さんが気になって、先に帰らせてもらった。
明日の担当の林田さんに軽い引き継ぎだけして、駅へ向かう。
「明日は代休とるように。三ツ谷君も休ませるから」
堤さんは、みんなの引きとめから解放してくれた後、そう言って送り出してくれた。
たぶん、何か感づいてるんだろうな、と思うけれど、気にしないでおく。
車窓に、自分が映る。
営業なら、読みなさい、か。
本当にそうだ。
自分の価値は、周囲が決めること。
自分がするべきは、ベストを尽くすこと。
私を選んでくれた人に、恥じないように。
それだけ。
(屈辱、かあ…)
なんとなく、その言葉を言ってもらって、自分でも認めたら、楽になってしまった。
私は、職場では、女であると同時に、仕事人でありたいと思っていて。
三ツ谷くんに、それをないがしろにされた気がして、屈辱を覚えていたんだ。
(それこそ、失礼な話だったかもね…)
三ツ谷くんが、それをないがしろにしたなんて、誰が決めたのか。
なんだか、勝手にぴりぴりしていたなあ、と反省する。
私ができるのは、ベストを尽くすこと。
それだけだ。