君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
新庄さんは、がさがさと音を立ててページをめくりながら、少し考えて言った。


「細やかで、ミスが少ない。仕事が速い。ちょっと手を引いてやれば、大胆な発想も出る」


急にちゃんとした答えが返ってきたので、びっくりした。
私、そんなふうに見えてたのか…。


「短所は?」
「流されやすい」


即答されて、軽く、ぐさっと来た。


「取引先の言うことを、聞きすぎると思う時もあった。けど、そのへんもふくめて、お前のバランスだからな」


言いながら、もうひとつ、というように、お皿に盛ったりんごを顎で指す。
私の、バランスか。


「そういうことで、悩んでたのか?」


新しく差し出したひとつをかじりながら、新庄さんが言う。


「そんな感じだったんですけど…結局、堤さんに拾われました」
「堤か」


面白そうに笑う。


「目的さえねじ曲がってなきゃ、やりかたは正攻法だからな、あいつは」


なるほど、うまいことを言う。
私もりんごを口に入れて、考えた。

長所も短所もふくめて、私のバランス。
そういう考えも、ありなのか。

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