君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
そして、四度目の今日。


土曜だけれど、夕方まで出社していた新庄さんと合流して夕食をとり、新庄さんの家で少しくつろいで。

寝るには早い時間に寝室に入って、ゆっくり楽しもうとしていたところ、今晩中に名古屋入りするよう、新庄さんに指令が来た。


私を腕に抱いた状態で、仕事用の携帯を耳にあてていた新庄さんは、しばし呆然とした後、枕元の腕時計を見ると。

ものすごいスピードでベッドを飛び降りてシャワーを浴びに行き、10分足らずで髪まで乾かして戻ってきた。


今日と明日の、二泊の急な出張。

今夜は、宿泊先のホテルで打ち合わせをするらしい。


それに間に合うように行くとなると、すぐにも出なくては間に合わない。


新庄さんがシャワーを浴びている間に、私も服を整えて、いつでも出られるようにしておいた。


ぱりっと折り目の入ったワイシャツ姿の新庄さんは、さっきまでの雰囲気なんてみじんも感じさせない。

清潔で有能そうなビジネスマン、そのものだ。


スーツケースに手際よく荷物を詰める様子を、デスクの椅子に座って見守る。

何か手伝いたいけれど、あまりに見事な支度ぶりなので、手の出しようがない。


出張の多い仕事だから、もう慣れっこなんだろう。

私も同じだから、わかる。



「ネクタイとってくれ、2本」

「珍しいですね」



締めているところなんて、ほとんど見ないのに。

< 6 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop