君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
また、涙が出てくる。


「他には」
「自分を棚に上げる」
「………」


一気に舌打ちをしたい気分になった。
こんな時にも意地が悪いなんて、ある意味すごい。


「直さなくていいってことですよね」


好きってことは。

ふてくされて、そう言うと。


「そうだよ」


聞いたこともないくらい優しい声が降ってきた。

どんな顔で言ったんだろうと、目線を上げるけれど、その前に口づけられる。
抱きしめられながら、頭の後ろに手が回って、しっかりと押しつけられる。

私は、両手を首に回しそびれてしまったので、代わりに背中を抱きしめた。
Tシャツ一枚の背中は、すぐ下に体温を感じる。

まだ、少し熱い。

大丈夫かな。
こんなことして、悪化しないかな。

そう思いながらも、シャツの下に手を入れて、脱いでほしいという意思を伝える。

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