君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
まだ整わない息の下で、新庄さんが、甘く噛むようなキスをくれる。
真っ白になった頭の中が、ようやく戻ってきた私は、色っぽいなあ、とその顔を見あげていた。
熱を確かめようと、額に手をあててみるけれど、私もいい加減体温が上がっていて、わからない。
「大丈夫だ」
私が心配するのを、あきれたように新庄さんが笑う。
私の頭を抱えるように抱いて、耳にキスをくれる。
汗で濡れた髪に指を差しいれると、くすぐったそうに首をすくめた。
幸せすぎて、罰でもあたるんじゃないだろうか。
こんなに好きな人の腕に抱かれて、体温を分けあって。
こんなに好きな人を、思う存分味わって。
そんな幸せ、許されるんだろうか。
私、いつそんな資格を得たんだっけ。
そんなことを考えていると、覆いかぶさる身体が、ふいに重みを増した。
「新庄さん?」
肩口の頭に声をかけても、反応がない。
揺さぶっても、答えない。
身体をずらして、どうにか重みから抜け出すと。
新庄さんは、枕に半分顔をうずめて眠っていた。
呆然とそれを眺める。
まさか、毎回こうなんじゃないだろうな、という思いが頭をかすめるけれど、たぶん、まだ体調が元に戻りきってなかったせいだろう。
まだ汗の残るこめかみに手を伸ばしても、ぴくりともしない。
そのまま髪を梳きながら、間近で眺める。
ぐっすりと眠るその顔は、安らいでいて、昨日とは全然違う。
深く、静かに身体を休めている姿。
規則正しい呼吸が、愛おしい。